片っ端から靴磨店:File 3 THE WAY THINGS GO

片っ端から靴磨店:File 3 THE WAY THINGS GO

靴磨店の突撃紹介企画「片っ端から靴磨店」。第三回は大阪と言えばココ!とも評されるTHE WAY THINGS GO(以降TWTG)です。靴磨きに携わる職人の方々を片っ端から取材してアレやコレやを自分なりにまとめるだけの企画ですので、ゆるくご覧いただければと思います。

大阪の大動脈にある磨き屋さん

まずは基本のキ、ロケーションからです。TWTGは大阪のど真ん中、中央区にある靴磨きと靴修理の専門店です。
最寄駅は御堂筋線 淀屋橋駅と堺筋線 北浜駅。総合商社や銀行、生命保険会社など大手企業が立ち並ぶ屈指のオフィス街です。大阪の心臓部である梅田地区からも程近く、要するにとても賑わっているエリアです。そんなコンクリートジャングルの中で一際目立つ建物の1つが「船場ビルディング」です(詳しくはこちら)。1925年に建造され、2000年に有形文化財に登録されたこの建物は近代建築の歴史をいまに伝える存在です。このモダンな建物の一角にTWTGはあります。

オフィス街から少し入ったところに偉丈夫然とした建物がTWTGが入る船場ビルディングです。中は温かみのあるランプでちょっと覗いてみるだけでも違う世界に来た感があります

前置きはこの辺にして早速突入してみましょう。TWTGは4階の415号室です。なんだかマンション然としたレイアウトです。と言うのも、パティオ風のこの建物は中央が「ズドン」と開けていて中央の「ロ」の字を囲うようにテナントが並んでいます。ですので、マンションのような出立は想像に難くないです。
ともかくも古風なエレベーターで4階に上がってみないことには話にならないわけなので、臆せずに415を目指してみることにします。

4階を連打して向かいます

エレベーターを降りて左!の一番奥へ・・・ワクワク!(お邪魔した時はビル全体メンテナンス中でした)

あらためてお店の紹介を

TWTGは2012年に創業、今の店舗のオープンが2015年の靴磨き、革靴修理の専門店です。今では当たり前になりつつあるカウンター磨きを10年前から行っていたある種パイオニア的な存在でもあります。お店では、靴磨きに加え、傷やシミの補修、色補正、革製品の修理まで幅広いサービスを提供しています。エスペランサ靴学院で靴作りを学んだ卒業生でもある石見さんが、修理やメンテナンスの提案を行い、大切な革製品を蘇らせます。郵送での依頼にも対応しており、遠方の顧客も多いようです。

​・・・という、前置きは良いんですよ。気取った紹介文はこのくらいにして、本質的な魅力をただ主観でお伝えるのがこの記事の目的でもあります。
日経新聞やGQ Japanなどさまざまな媒体に掲載され、靴磨き選手権でも優勝を果たしたTWTG。だけど、その魅力の本質は、表面上の評価というよりお店の世界観や技術に依拠していると思うわけです(力説)。
ですので、Google検索で判明する情報はこの辺にして、ここからは個人的な見どころを偏りがありながらご紹介しようと思います。

どんな感じのお店?

お店の雰囲気を文章だけのブログで説明すること自体かなり野暮ったい行為ではありますが、触れずにはおられません。ちなみに、お店紹介動画はYoutubeでいくつか上がっているので(こちらとか)そっちをご覧いただければとは思います。

お店の雰囲気作りについては様々動画内で語られていますが、個人的に注目して欲しいと思うのは「壁」です。家具や調度品のセンス、と言うのも無論あると思いますが、特徴のある世界観作りに貢献しているのは随所に散りばめられたフォトやアートなのかなと思います。
ぐるっと一周、どこかしこに大小のフレームが置かれておりどれも違った表情を見せてくれます。

ちょっと見切れているところもありますが白を基調とした店内のそこかしこにアートが置かれています

建物も重厚感があり、店内の間取り自体もシンプルで堅牢な感じを受けます。配置された家具も欧州中心にセレクトされており全体的に「堅さ」を感じるところではありますが、そこに壁面アートが変化を与えることで全体のバランスをとっているような、そんなイメージを受けます。
革靴や靴磨きがお好きな方には写真、カメラ趣味の方も多くいらっしゃるかと思いますが、そういった方にフィットするお店なのかもしれません。尚、店頭に立たれている奥様は美術や写真に造詣が深いので、趣味が合う方は特に楽しく過ごせると思います。

今回磨いてもらう靴は

さて、今回磨いてもらう靴はJohn LobbのCITY Ⅱです。少しよそ行きのビジネスシューズ感がありながら、シボ感がちょっと強めに出ていることでカジュアルさがあり使いやすさがあります。
磨いてもらうポイントとしてはやはりつま先と踵で、全体感とのコントラストをつけていく感じがプリティさを演出するのかなと思います。個人の感想もありながら早速お願いしてみます。

John Lobb CITY Ⅱ

石見豪さんの磨きはなんというか「静か」です。沈黙という意味ではなく、動きに無駄が無く力を入れるとこは入れながらもそれを表に出さないような、細やかさがあります。ご本人曰く、腕や指を酷使しすぎて怪我を負ったこともあるそうで、理に適った磨きに洗練されていったのかもしれません。
ただ、私が思うには、この静けさを支えているのはノウハウの蓄積や経験だけでなく「観察眼」が重要なのかなと思うわけです。持ち込まれた靴のコンディションに加え、一つ前にどんな磨きを施されたのかを目と肌で感じながら処置を決めていくような。日常を再発見していくように、革靴のコンディションや背景、奥行きを見極めながら処置するような。そんな老練な名医のオペのような一幕なのかもしれません(個人の感想です)。

意味がわからないポエムを長々と語るのはこれまでにして、それでも磨きは進んで行きます。丁寧なブラッシング、クリーニングで整った土台に丹念にクリームが塗り込まれ、長持ちする鏡面が完成していきます。
この間、SNSの使い方や最近の靴磨き道具の進化、写真の撮り方となぜか金融の話まで多様な話をさせていただきましたが、これまた堅苦しくなるので割愛します。要は、話の引き出しが多いのでアッと言う間に時間が過ぎ去ってしまいました。

パッションフルーツソーダをいただきながら(好みを覚えていてくださっていてとっても嬉しい)

ワックスを繊細かつ力強く、絶妙な力加減で重ね・・・石見さんの人差し指は柔らかいのか硬いのか、永遠の謎

ネルを持った瞬間に魔法のように輝き出す、何度見てもワクワクします

※ ブラッシングは見えません

たまに見える瞬間も?見逃すなかれ

艶モチに蘇りました!ロブさん強そう

写真では光の当たり具合で明るく見えますが、履くとスッと足元にお上品に収まってくれます。石見さんに磨いてもらった靴を履くと不思議なことに勇気のようなパワーを感じるんです。相棒にパワーを込めてくれ、気持ちも整う。そんな重磨きです。※個人が毎回思う感想です そして靴の綺麗さが本っ当に長持ちするのも特徴だと思います。

今回もありがとうございました。

こんな人にオススメしたい

海外のお客様

日本語で長文のブログを書いておいて何言ってんだこいつ、という感じではありますが、日本の靴磨きに触れたい外国の方には特にオススメしたいです!彼らから見て日本の靴磨きスタイルはそもそもが異質だと思います。そうであれば、トコトン異質な空間に没入できるTWTGに入門するのが良いと思います(褒めてます)。
奥様を含め語学が堪能ですし、海外のアートや文化についても造詣が深くていらっしゃる。そんな靴磨き店はここしかないのではと思うばかり。海外からのゲストを連れて行くのも新たな日本の体験として喜んでもらえるのではないでしょうか。

近くにお勤めの方・お住まいの方

前述の通り、大阪のオフィス街に位置していますし、靱公園などマンションが立ち並ぶエリアからも程近いので、日々の業務で疲れ切った革靴を癒しにくるのも一興です。近くに美味しい飲食店も多いので、立ち寄った流れで食事をして帰るも良し、時間がなければ預けてしまって会社帰りにピックアップしても良し。好立地、かつ趣ある建物に入っているので誰かに話したくなる素敵な体験が増えると思いますよ。

出張、商談前に立ち寄って

TWTG さんは、ビジネスマンとして、当たり前の習慣として身だしなみを整え、気持ちも整えに来られるお客様が多いのではないかと思います。一流のサービスとは何か、それはお店が入る建物に一歩足を踏み入れたところから拘りと妥協のない姿勢を感じ取れます。前途の通り石見さんに磨いてもらった靴を履くと気合い(仕事)スイッチが入ります。大切な商談の前に心を落ち着かせ気合を入れ、験を担ぎに訪れるのがおすすめです。その後の商談が絶対上手くいく無敵な気持ちになります。ビジネスマンにとっての神社になる日も近いかも!?

そもそもの革靴好きの方

私が紹介するまでもありませんが、石見さんの受賞歴や取材歴は数知れず。その体験や様々な靴用品、監修したスーツや革靴などなど、ベーシックなところからマニアックな話が存分に楽しめます。多分1回だと吸収しきれないと思うくらいの情報量です。そんな情報の海に溺れる週末というのもこれまた素晴らしいひと時だと思うわけです。素敵なお店の雰囲気からちょっと敷居が高いように感じる方もいらっしゃるかもしれません。でもね、私も大好きな奥様が会話の要所要所で石見さんの意外な一面をちょいちょい引き出してくれるので、いろんな発見があって楽し

受賞トロフィーや開発、セレクトした商品がずらりと並ぶショーケース

珍品、もとい世界的に貴重なラストなど。ここでしか見れない、聞けないストーリーは是非お店で


ちょっとお高い靴を買ったから良いメンテナンスを受けたい、という人がまず選ぶお店がTWTGだと思います。ただ、私としては靴磨きに興味を持ち始めた方や、日常づかいでガシガシ革靴を履くビジネスマンにこそオススメしたいお店です。安定した超高品質を体感できる
もうすぐ100年を迎えるレトロな建物でモダンな靴磨きを体験する、ちょっと変わったギャップのある体験をしてみるのはいかがでしょうか。

KIEKO

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