靴磨店の突撃紹介企画「片っ端から靴磨店」。
靴磨きに携わる職人の方々を片っ端から取材しアレやコレやと聞きたいことを聞いてきて自分なりにまとめるだけの不定期すぎる気まぐれ企画です。第二回は姫路市の磨き座 継 – HERITAGE –店主、西岡ぺこさんです。たけのこと蓮根の産地で活躍する個性的な磨きスタイルをゆるくご紹介します。
まずは姫路の紹介から
お店の紹介に入る前に姫路市について紹介していきます。折角都市部から離れた靴磨き職人を紹介するのに、ローカルな魅力をお伝えしないのは損というもの。足を運ぶなら姫路を満喫しないと失礼というものです。
さて、兵庫県の西側に位置する姫路市は「白鷺城」とも称される世界遺産・国宝の姫路城で知られる歴史と文化の街です。暴れん坊将軍のオープニングでマツケンさんが白いお馬さんに乗ってパカラッ!パカラッ!と登場するシーンは姫路城です!子供の頃再放送をよく観たわぁ。懐かしい。市街地は城を中心に発展し、観光、商業、自然が調和した暮らしやすい都市環境が魅力です。四季折々の自然美や地域独自の祭り、グルメなども楽しめます。また、新幹線が停車する姫路駅があり、交通の便も非常に良い地域です。つまりコンパクトシティというやつです。
そんな姫路市の中で中心部に位置するのが「おみぞ筋商店街」です。姫路駅から姫路城へと続く道沿いにあるショッピングエリアで、多彩な店舗が立ち並ぶ賑やかなスポットです。アーケードが設置されているため、雨の日でも快適に散策できますのもポイントですね。飲食店も豊富で、姫路名物の穴子料理やおでんなどのグルメを堪能できるのも魅力のひとつです。
夕方から靴磨き屋に立ち寄り小粋なトークを満喫し夜は姫路おでんを嗜む。酔った勢いで新幹線の最終に飛び乗る。
控えめに言って最高の週末日帰り旅ができる場所、それが姫路です。
参考:兵庫県はりまエリアの“楽しい”をチョイスする地域情報サイト TANOSU [タノス] より、姫路おでん
なぜ食べ物の紹介をしたのか?
革靴やら靴磨きの話をするのではなかったか、と自問自答も入ろうと言うもの。しかし、実は西岡ぺこさんは食のプロでありまして、触れずにはおれんかったわけです。
高校時代をバスケットボールに打ち込んでいたぺこさんは卒業後、以降大阪→東京→大阪(北海道も?)とレストラン/カフェを渡り歩く異色の元シェフ靴磨き職人です。特にイタリアン全般がお得意だとか。
その後なんやかんやがあって姫路に流れつき、お母様が靴屋さんをやっていた関係で今は無き「ヤマトヤシキ百貨店」にお勤めになり、そこで独学で靴磨きを学びながら腕を磨いていきます。
そして、ぺこさんの靴磨き人生は、石見豪さんが運営する「THE WAY THINGS GO」を訪れたことで激変します。当時はまだまだ広がりを見せていなかったカウンタースタイルの磨き、技術の高さに感銘を受け試行錯誤の末現在のスタイルに収まったとのこと。
この前置きの話だけで小一時間は語れるほどお話をいただきましたが、本筋から大幅にズレるのでこの辺にて。
ご興味がある方は是非店頭でご本人と楽しくおしゃべりされることをオススメします。ぺこさんの身の上話を聞きながら靴磨きを目の前で堪能するのも中々乙なものです、とにかく「話していて飽きない」と言うことをお伝えしたかった次第です。「母やで」の話はマジで面白すぎるので必聴です。
趣味全開の店内
おみぞ筋商店街をズズいと進み、キュッと曲がると白を基調とした門構え「磨き座 継」があります。
黒船が襲来した模様
奥行きのある店内は趣味全開のワールドが広がっています。向かって左手は革靴ケア用品や数々の受賞歴が並び、右手には斧。いや、斧です。曾祖父の肩に刺さっていた伝説があるとかないとか、訪れる靴磨き職人たちが必ず写真に収めて帰るというパワースポッ斧、伝承の始まりはぜひ直接ぺこさんに会ってお問合せください。
画像ではわかりづらいのですが、天井が高いせいか実際より広く感じる店内は、一般的な磨き店とはちょっと違う雰囲気があります。
斧や不思議な絵が飾られている店内。雑貨づかいもおしゃれ
となりの人間国宝さんに認定もされています。関西在住であればこれだけで一流とわかってしまうでしょう
向かって正面に2脚の椅子が備え付けられたカウンターがあります。しっかりした作りのテーブルは雰囲気があります
左右だけでなく奥行きも趣味としか思えない品々が並びます。顧客から預かった靴が並んでいたかと思えばピンクの自転車まで。小綺麗なガレージや秘密基地といったところでしょうか。そんな世界観が広がります。かつてこのお店は隅から隅までピンクだった・・・そんな歴史も継しきちんと残しているのがぺこさん。
今回磨いてもらう靴は
今回磨いてもらう靴はCorthay Arcaです。気に入って履いている靴なので定期的にメンテナンスしたくなります。
「クレームブリュレ」を意識した配色でパイピングは金、いい感じに溶けていくような仕上がりをお願いしました。
年季が入ったレザーマットは革の町である姫路産。使い込まれていて味わいがあります。それよりもゴリラTシャツが気になる
磨きのスタイル
その風体に似合わず(?)磨きのスタイルはオーソドックスで堅実なスタイルという印象です。しっかりとしたブラッシングで下準備・コンディショニングをし、順序よく軽妙な指遣いで仕上げてゆく。奇を衒わず一つ一つこなしていく。めっちゃ丁寧。なんでもかんでも結びつけて考えるのは良くないとは思いますが、レシピ通りに調理を進め味付けを微調整していくようなイメージが浮かびます。ぺこさんがパスタ作ったら美味しそう・・・
引き出しの多さとトークの面白さに夢中になっている間にどんどん進んでいく靴磨き
ブラッシングのストロークの力強さ、大胆さはリズミカルで小気味良いものがあります
さて、磨いている最中も靴磨き職人になった経緯やお店のこと、姫路のグルメ、謎のフィリピン人の話題までなんでもこなします。立ち寄るのにオススメな姫路のお店や観光スポット紹介まで話題に事欠かないので、手ぶらで行っても大丈夫。トークが楽しすぎるのでお腹を抱えるような時間を過ごすことができます。様々な雰囲気やスタイルの靴磨き屋さんがありますが、お腹抱えて笑って、帰る時にはぺこさんのことが大好きになっているはず。は〜楽しかった!!帰り道もようわろたわ〜といい日を送れたと思うでしょう。店主にまた会いに行きたくなる、そんなお店です。ぺこさんにもきっとギアがある?ので、それを体感できるかはお客さん次第!?いや、ぺこさんなら笑わせてくれます。ね!ぺこさん!※ 個人的な感想です。時によってキリッ!シャキッ!サササッ!としたバージョンのぺこさんにも会えるのかも?
磨かれ終え満足げにドヤ顔してる我がArca
艶やかに輝いている鏡面部分以外も内からエネルギーが溢れているかのようにしっとり輝き、丁寧な技により美しく元気になりました。この靴はワックスの乗っている鏡面部分の透明感、瑞々しさと、鏡面していない部分との差が顕著に現れるのですが、さすが皮革の気持ちがわかるかの如く精通しているぺこさん。しっかりと時間をかけ丁寧にコンディショニングをしてくれていた理由が仕上がりに現れました。まさに生き返ったかのようなそんな感覚。靴の革の状態を確かな知識と経験で見抜き、技術でそのポテンシャルを最大限引き出してくれる。ぺこさんの面白さに凄さが隠れてしまっている気がしますが笑 素晴らしい靴磨き屋さんです。
最近ふっくらしたポパイ的ぺこさん
毎年干支型の革を染めるワークショップもされています。来年は巳ですね!
最後までサービス精神山盛りのぺこさん。背が高いのよ〜
ありがとうございました〜!!!また飲みに行きましょう!
ペコさんに紹介してもらった焼肉、祥園さんへ
美味しかったです!白ごはんは必須でした。肉食なもので・・・今度こそは激推ししいただいた姫路おでんを堪能したいと思います。
磨いてもらっている間も何人も他のお客様が来店されて、平日夕方にも関わらず賑やかさを失わない店内。気取らない独特なお店はちょっと気分を変えたい時、少しだけ時間ができた時に立ち寄るのにもオススメです。気になることがたくさんあると思いますが、まずはぺこさんに任せて、旬のお話を聞いてみてください。
リーズナブルに観光、グルメ、靴磨きを堪能できる素敵な城下町、姫路。一度ふらりと立ち寄ってみるのはいかがでしょうか。
KIEKO